「基本情報技術者試験」はIT業界に携わるなら、必ず1度は耳にするほど有名な試験です。
IT業界で働く上での基礎知識を問われる試験であり、IT従事者にとっての登竜門的な試験となっています。
本記事では試験の概要や合格率、必要な勉強時間などを詳しく解説したいと思います!
基本情報技術者試験まとめ
- ITエンジニアとして基本的な知識・技能を問われる試験
- 午前試験・午後試験とも6割以上の正答率が必要
- IT経験者は50時間、未経験者は200時間程度の勉強時間が目安
基本情報技術者試験の概要
基本情報技術者の位置付け
「基本情報技術者試験」はITエンジニアとして基本的な知識・技能を有していることを証明できます。
つまり、国がITエンジニアとして基本のラインを定義した試験とも言えます。
この試験で得た知識を基盤に、さらに上位の応用技術者試験や専門的な知識が必要な高度試験を目指すことができます。
IPAのシラバスでは、期待する技術水準が以下のように記載されています。
【期待する技術水準】
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
1. 情報技術を活用した戦略立案に関し,担当業務に応じて次の知識・技能が要求さ れる。
・対象とする業種・業務に関する基本的な事項を理解し,担当業務に活用できる。
・上位者の指導の下に,情報戦略に関する予測・分析・評価ができる。
・上位者の指導の下に,提案活動に参加できる。
2. システムの設計・開発・運用に関し,担当業務に応じて次の知識・技能が要求さ れる。
・情報技術全般に関する基本的な事項を理解し,担当業務に活用できる。
・上位者の指導の下に,システムの設計・開発・運用ができる。
・上位者の指導の下に,ソフトウェアを設計できる。
・上位者の方針を理解し,自らソフトウェアを開発できる。
情報技術全般の基本知識を有し、上位者指導の下で業務ができるレベルが「基本情報技術者試験」の立ち位置です。
受験方式
コロナ禍の影響を受けて、令和2年度からは受験方式がCBT方式となっています。
CBT方式とは従来の紙での試験ではなく、コンピュータ上に試験問題が表示され解答する方式となっています。
当日の受験の流れや出題画面のサンプルが、プロメトリック社より公開されているため事前にチェックしておきましょう。
問題に直接書き込むことができないため、手元のメモ用紙で解く練習が必要です。
試験実施期間と受験費用
試験は上期(5~6月)と下期(10月~11月)に分かれており、それぞれ2ヶ月間程度の期間で開催されます。
CBT方式では都合良い日程で受験日を設定することができます。つまり午前試験を5月初旬、午後試験を6月末のように2ヶ月間をフルに活用することもできます。
試験の合格発表は受験日の約1ヶ月後に、IPAのWebサイトで発表されます。
なお各試験の結果は、試験後その日の内に通知されますので、点数はすぐに確認することができます。
2021年 下期試験 | 2022年 上期試験 | |
申込期間 | 2021年9月6日(月)〜2021年11月22日(水) | 2022年3月1日(火)~2022年5月24日(火) |
試験実施期間 | 2021年10月1日(金)〜2021年11月28日(日) | 2022年4月1日(金)~2022年5月29日(日) |
受験資格 | 年齢や学歴問わず誰でも受験可能 | |
受験費用 | 7500円(税込) クレジットカード、コンビニ払い、Pay-easyで決済可能 (振込手数料は自己負担) | |
合格発表 | 午前試験・午後試験を完了した1ヶ月後 |
基本情報技術者試験の詳細
受験者数と合格率の遷移
「基本情報技術者試験」は有名な国家試験ですが、実際どれくらいの人数が受験し合格しているのでしょうか?
以下のグラフは直近10年間の受験者数と合格者数の推移です。
平成30年までは受験者数が10万人前後となっており、その人気度が伺えます。
一方で合格率は20~30%と、基礎的な内容の試験ですが簡単には合格できないことがわかります。
コロナ禍の影響もあり平成31年度以降は受験者数が減少していますが、CBT方式に移行してからは合格率が急激に上昇し40%を超えています。
これは午前と午後を別日で受験できること、午後試験の問題数の減少などの影響が考えられますが、単純に試験が易化したわけではないので注意してください。
基本情報技術者試験の試験内容
「基本情報技術者試験」は午前試験と午後試験に分かれており、試験時間や合格点は以下のようになっています。
試験 | 試験内容 | 試験時間 | 合格点 |
午前試験 | 4肢択一の問題80問 | 150分 | 60点以上 |
午後試験 | 長文形式の問題11問 内5問解答 |
それでは午前試験と午後試験の出題範囲について、確認していきましょう。
午前試験の出題範囲
午前試験の出題範囲は大きく分けて3分野に分かれています。中でもテクノロジ系は問題数の6割を占めているので重要な分野になります。
配点はすべて1.25点となっているため、合格ラインの60点に到達するためには80問中48問以上正解しなければなりません。
分野 | 出題数 | 配点 |
テクノロジ系 | 50問 | 各1.25点 |
マネジメント系 | 10問 | |
ストラテジ系 | 20問 |
次に各分野で出題される問題をもう少し詳しく見てみましょう。
以下の表を見てください。これが「基本情報技術者試験」の出題範囲が広いと言われる所以です。
中分類だけでも23あり、IT技術だけでなくプロジェクトマネジメントや法務などの問題が出題されます。
しかし、心配する必要はありません。
実は出題される問題の半分以上が過去問題からの出題となっているため、過去問題を繰り返し解いていれば自然と点数が上がります!
分野 | 中分類 | 小分類 |
テクノロジ系 | 基礎理論 | 離散数学、応用数学、情報に関する理論、通信に関する理論、計測・制御に関する理論 |
アルゴリズムとプログラミング | データ構造、アルゴリズム、プログラミング、プログラミング言語、その他の言語 | |
コンピュータ構成要素 | プロセッサ、メモリ、パス、入出力デバイス、入出力装置 | |
システム構成要素 | システムの構成、システムの評価指標 | |
ソフトウェア | オペレーティングシステム、ミドルウェア、ファイルシステム、開発ツール、オープンソフトウェア | |
ハードウェア | ハードウェア | |
ヒューマンインターフェース | ヒューマンインターフェース技術、インタフェース設計 | |
マルチメディア | マルチメディア技術、マルチメディア応用 | |
データベース | データベース方式、データベース設計、データ操作、トランザクション処理、データベース応用 | |
ネットワーク | ネットワーク方式、データ通信と制御、通信プロトコル、ネットワーク管理、ネットワーク応用 | |
セキュリティ | 情報セキュリティ、情報セキュリティ管理、セキュリティ技術評価、情報セキュリティ対策、セキュリティ実装技術 | |
システム開発技術 | システム要件定義・ソフトウェア要件定義、設計、実装・構築、結合・テスト、導入・受入れ支援、保守・廃棄 | |
ソフトウェア開発管理技術 | 開発プロセス・手法、知的財産適用管理、開発環境管理、構成管理・変更管理 | |
マネジメント系 | プロジェクトマネジメント | プロジェクトマネジメント、プロジェクトの統合、ステークホルダ、スコープ、資源、時間、コスト、リスク、品質、調達、コミュニケーション |
サービスマネジメント | サービスマネジメント、サービスマネジメントシステムの計画及び運用、パフォーマンス評価及び改善、サービスの運用、ファシリティマネジメント | |
システム監査 | システム監査、内部統制 | |
ストラテジ系 | システム戦略 | 情報システム戦略、業務プロセスソリューションビジネス、システム活用補足・評価 |
システム企画 | システム化計画、要件定義、調達計画・実施 | |
経営戦略マネジメント | 経営戦略手法、マーケティング、ビジネス戦略と目標・評価、経営管理システム | |
技術戦略マネジメント | 技術開発戦略の立案、技術開発計画 | |
ビジネスインダストリ | ビジネスシステム、エンジニアリングシステム、e-ビジネス、民生機器、産業機器 | |
企業活動 | 経営・組織論、OR・IE、会計・財務 | |
法務 | 知的財産権、セキュリティ関連法規、労働関連・取引関連方規、その他の法律ガイドライン・技術者評論、標準化関連 |
午後試験の出題範囲
午後試験は必須問題と選択問題があり、11問中5問を解答する必要があります。
問1の情報セキュリティと問6のアルゴリズムは必須解答問題となっています。
問2~6は複数の分野から4問出題され、2問選択して解答します。
問7~11はC言語、Java、Python、アセンブラ言語、表計算ソフトの中から1つを選択して解答します。
分野 | 問1 | 問2~6 | 問6 | 問7~11 | 配点 |
情報セキュリティ | 必須 | 20点 | |||
ソフトウェア・ハードウェア | 左記から3問出題 | 各15点 | |||
データベース | |||||
ネットワーク | |||||
ソフトウェア設計 | |||||
プロジェクトマネジメント | 左記から1問出題 | ||||
サービスマネジメント | |||||
システム戦略 | |||||
経営戦略・企業と法務 | |||||
データ構造及びアルゴリズム | 必須 | 25点 | |||
ソフトウェア開発(プログラム) | 5つの言語が出題 | 25点 | |||
解答 | 1 | 2 | 1 | 1 |
各設問は長文形式で配点も高くなっているため、午前試験よりも難易度が高いです。
特にアルゴリズムとプログラミングの配点が25点と、この2つだけで半分の点数を占めています。
プログラミングに苦手意識を持つ人が多く、午後試験で不合格になる人が多いのが現実です。
合格に必要な勉強時間
「基本情報技術者試験」にIT初学者の人が合格するには、約200時間の勉強時間が必要だと言われています。
200時間は毎日3時間勉強したとしても2ヶ月以上かかる計算になります。継続的な勉強が必要です。
一方IT知識を持っている人であれば、勉強時間が50時間もあれば合格可能です。
事前知識にもよりますが、短期集中型の勉強で合格することができます。
筆者の合格体験を元に、勉強方法を紹介していますので参考にしてください。
まとめ
基本情報技術者試験まとめ
- ITエンジニアとして基本的な知識・技能を問われる試験
- 午前試験・午後試験とも6割以上の正答率が必要
- IT経験者は50時間、未経験者は200時間程度の勉強時間が目安
今回は「基本情報技術者試験」について詳しく解説しました。
ITエンジニアの基礎を問う試験なので、難しすぎることはありません。
しかし簡単な試験ではありませんので、しっかりと準備をした上で試験に望みましょう!
さらにこの試験を通して、上位の応用技術者試験や高度試験への足がかりにしましょう!